陶芸と暮らしの当事者として

 

2021/モノクロ、48p、B5

陶芸がわたしを取り巻く暮らしに影響を与え、暮らしが陶芸に批評と新しい視点をもたらしているのではないか、という考えから書いた文と絵を収録した48ページのちいさい本です。

 

 

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作業場で粘土を触りながら今日の夕飯のことを考え、食器を洗いながら作品のことを考える。そんな暮らしが今年で8年目になる。

批評家の沢山遼は工芸作品は「事物による事物の批評」が内在していると書いた(『工芸批評』新潮社青花の会 2019)。古い陶磁器が今も残っているのは人の趣味趣向ではなく、作品が雨、風、水といった現象に晒されることによって作品それ自体の充実(漏れ・手触り・耐久性・経年変化)に人が気付き、作品を信頼してその価値を受け継いでいるのではないか、という内容だった。なるほどと思った。かつて、縄文時代に誰かが作った土器を今生きる私たちが見ることができるように、焼成された粘土は制作者の寿命を遥かに通り越してゆく。しかし、いま生きていて作品を制作しているわたしにとって、ここから先の未来のことは想像することができても、なす術がない。

けれども、陶芸がわたしの周りを取り巻く暮らしに影響を与え、また、その暮らしが陶芸に批評と新しい視点をもたらしているのだと考えると、とてもしっくりきた。今この時に生きる制作者自身の時間を掬い上げること。道具として使用する/ 使用されるという関係性だけでない、陶芸と人を結ぶ関係性について、自作についての語りでなく、陶芸と暮らしの当事者であること、そこからみえることについての視点を精神医療の現場で行われている当事者研究の手法をベースに残してみようと考えた。

 

 

※当事者研究・浦賀赤十字病院精神科とべてるの家で始まった精神障害当事者やその家族を対象としたリハビリのプログラム。自分自身のその症状がどういった条件下で引き起こされそして止むのか、それが起こった時周りの人に望むことはあるか、など自分自身を研究し発表することで症状の理解を深め他者と関わりやすくしていく手法のこと。(『べてるの家の「当事者研究」』医学書院 2005)

 

 

あとがきより